八陣 遅れてきたあいつ 04年 あいふぇす

 

という感じで締切り地獄をすべて乗り越えたミホ。

最後は怪しかったけど、まあ一応本はすべて出し終えたし、よしとしましょう。

とりあえず、今年の『のぶみほ新作工房』としての活動計画はこれにてすべて終了。

あと控えているのは冬のコミックマーケットだけど、これは各々のサークルだから

正確には『のぶみほ』ではないわけで。

 

みほみほもそうだけど、私も『しめきりー!』せっつき地獄から開放されたわ。

漫画の編集者って、いっつもこんな感じなのかしら。 今回でよく分かったわ。

嗚呼、開放感。

 

「あ、ねえのぶちゃんのぶちゃん

「なに? みほみほ」

「あのさ、来月にもういっこイベントあるんだって。

あいちゃんの誕生日記念で、『あいふぇす』ってのが」

「ふーん」

「…ふーん、って…」

「なに、みほみほひょっとしてそんなのに出たいの?」

 

はい、自慢じゃありませんが…

私こと横川のぶこは、こんな名前なワリには

あんまりあいちゃん好きじゃない方です。

ごめんなさい、そこまで役に徹しきれないの。

という訳で、あいふぇすっていうイベントをそんなの呼ばわりしたわけですが、

みほみほは食い下がります。

 

「んー、私もどーでもいいんだけどー(あいちゃんの誕生日なんて)

でもほら、作った本が余ってるでしょ? だから少しでもイベント出てさばかないと。

残っちゃって焚き火の燃料にするのもいやだしー」

「そりゃそうだけど… でも、イベント出るっていうことは、

また本作らなきゃならないってことよ? 私達、新作工房だもの」

大丈夫。 まだ一ヶ月くらいあるし。 コピー本なんてさくっといけるわ」

「大きく出たわねみほみほ…。

でもねー、あいちゃんのイベントってからには、

あいちゃんの本を作らなきゃでしょ?

…正直、全然乗らないのよねー… あいちゃんだと←ホントに横川信子じゃないな

「そんなのこだわらなくても平気でしょ。 やろうよ。 ね?」

という具合で、今回は珍しくみほみほのやる気が高かったので、

私も迷った末イベント参加を決意しました。

ホント、別に『あいちゃんの本』じゃなくても構わないイベントだったんですが、

やっぱりそこは横川のぶこ、こだわりたいじゃないですか。

一番ネックだった『キャラに対する愛のなさ』をどうにかクリアして、

イベント用のネームは無理矢理ながら完成しました…

と。

 

さて、今回もまたいつもと同じように

『締め切り間に合わない』だの、

『本落ちそう』だの

っていう展開なので、いい加減これを読んでるみなさんもその辺はすっかり承知でしょう。

ご想像の通りの経過があるって事で、今回はいつも簡略して書いている

イベント中の私達の姿を、ちょっと詳細に書いてみるわね。

 

 

 

当日の朝、全く寝てませんっていうのは挨拶みたいなもの。

私とみほみほは重い瞼を騙し騙ししながら、サークル入場ギリギリに会場へ到着。

おりしもこの浅草の場所は、前々回パーヘクトなサークル参加を決めた場所であったにもかかわらず…

 

「もう絶対に会場製本しないって言ったのに… なんでこうやって折ってるわけ?

「い、いいじゃないのぶちゃん! ホラ、テーブルも大きくて折りやすい環境だから!

「…もういいわ。 とっとと折りましょう。 さっさと折りましょう。」

「ら、らじゃー!」

 

のぶとみほが黙々と本を折る姿を見かねたのか、隣のサークルさんが

『あの、手伝いましょうか?』

と、言ってはならない後悔の一言を口にする。

覚えておくといい、そういう社交辞令というかスタイル的な言葉は、

こういう場合の私達にとって本気に取られてしまうということを。

『あ、いいです、すみません』

なんて大人ぶった返事は返ってこない。

みほみほ、笑顔で

『ありがとうございますー! じゃ、はいこれお願いします』

と、遠慮なく紙の束を無関係な人間の前に置く。

この場合だけ、私はそんなみほみほの厚顔無恥っぷりを見て見ぬ振り。

 

労働力を抑えて少しペースは速まったが、結局本が出来ないうちに

イベント開始。

一般の参加者さんが次々と会場に入ってくる。

私はそんな人たちに背を向けながら、スペースの前で本を折り続ける。

のぶみほ新作工房の無様な机の上を覗いては、

『あー、やっぱりまた折ってる

『なんだ、まだ出来て無いのか

『いっつも待たせるんだよな、ここ』

という心の声を私の背中にぶつける人々。

いたたまれません。

しかし、心の声だけではないのです。

そのうち、

 

「あの、いつ出来ますか?」

 

と、聞いてはならない禁断の質問がついにのぶこに炸裂。

のぶこはここで公式回答をしなくてはなりません。

いつ、完成するか。

これを定めるのが一番難しいところ。

早すぎるとまた人を待たせなきゃならないし、

遅すぎると『○○時から頒布します』っていった人の手前、すでに完成してても本を配ることはできない。

慎重に言葉を選んで、『○○時前後には…』と、時間を決める。

さあ、その時間がタイムリミット。 急げ急げ…。

 

今回の本は正直あまり気合が入ってないモノだし、完成ギリギリなので

この前のように100部以上、という数は作ってない。

が、やっぱり折ったりの製本作業は大変なわけで、

結局完成もギリギリみたいなものだった。

ってゆうか私達にとってギリギリってデフォね。 ほんと。

時間が近づくにつれて、なんか人も列作り出しちゃったし、

あわあわする中でイベント開始一時間後にのぶみほ新作工房はのれんを開けた。

 

で、申し訳ないくらいに出来ちゃった行列をドタバタさばくのが大体20分くらい。

機械のようにお金をもらって本を渡して、

『お待たせしました、ありがとうございます』

って言葉を返して…

それのみでその時間は過ぎていく。

 

でも、それが終われば後はのんびりとしたものになるわ。

 

「ふう、終わったわねみほみほ…」

「はー、なんとかコピー本は無くなったね」

「あとは私がのんびりとお客さんの相手するから、

みほみほはちゃっちゃとソレ片付けなさい」

「ふいー…」

 

そう、いつのまにかみほみほの脇には数冊のスケッチブックが溜まってる。

いわゆる『スケブお願いします』ソレなわけで、イベントの間は自然と

私が売り子、みほみほがスケブ、って感じになるわ。

 

「こんちわーっす」

「ういーっす」

「どーぉ? 本売れたー?」

 

そんな空気になると、少しずつお友達なみんなが私達のところにやってくる。

基本的に私達は二人とも動けないから、こーやってスペースの中でお話してたりしてるわね。

気がつけばみほみほもスケブ真っ白のまま会話に参加してたりするので、

たまにド突いて手を動かさせる。

 

そんな中でもぽつぽつお客さんが来て、私達の本を手にとって見てくれるわ。

本をぺらぺらってめくっていって、本を置いていかれる人。

ごめんね、エッチな本じゃないのよ。 きっとエッチなものを期待して見てたのね。

本をゆっくり読みながら、クスリと笑ってくれる人。

うっ、どこが面白かったのかしら。 気になる、気になるわ。 感想ちょうだい。

ってゆうか、そういう反応見ちゃったら私の勝ちねっ! ふふんっ!

本を見て全く無表情な人。

むっ、にらめっこ勝負をしてる人ねっ。

きっと本当はクスリとしたいんだけど、表情に出さないようにしてるのねっ。

甘いわね、そんなのお見通しよ!(←自信過剰)

 

私はイベントの間ずーっと座ってスペースにいるわけだけど、

そんなお客さんの姿を見てるだけで全然楽しいわ。 ちっとも退屈しないし。

まあ、人が来ないとさすがに退屈なんだけど、それはそれで。

色々な人が私達の本を見てくれてる、って事実を目の当たりにしてるだけで、

なんか、こう、本当にうれしいわよね。 みほみほ。

 

「…ってわけでー、やっぱハナちゃんはもうちょっとエロく描きたいってゆうかー」

↑ ダベリ中

「ってみほみほぉ! あんたまだスケブ進めてないのっ!!?

もうイベント終わっちゃうわよっ!!?

「あ、あれ? …そ、そうですね…」

 

とまあ、こんな感じでイベントの終了時間がやってきます。

会場内は『これをもちまして、終了しますー』のアナウンスに全員が拍手してる中…

全然終了してないが私の目の前にいる。

 

「…ほら、みほみほ… 撤去しなきゃ。 撤収作業よ。

机の上、片付けるわよ…」

「…う、ううー… はい…」

 

隣のサークルさんたちはテキパキと荷物を片付ける中、いつも私達の机の上は…

みほみほの画材道具一式が、ゴロリと残っています。

遅れてやってきて、ここでも遅れてなかなか片付けない私達…。

 

だー!! もう、最低だぁー!!

「ひ、ひぃっ! だ、だいじょうぶっ!

なんとかイベントの二次会終了までには全部終わらせますっ!!」

 

イベント中までブッちぎった締め切りに追われるみほみほを尻目にして、

なんとかスペースをお片付け。

みほみほは画材とスケブを抱えたまま、会場の床に座ってお絵かき続行。

 

見てください。

 

原稿描いてるときとまるで同じままのみほみほ先生の姿を。

場所はともかく、全く時間を気にしていません。

これじゃ締め切り守らねえハズだよ、誰もが納得するでしょう。

みんながイベント二次会のジャンケン大会やらをやってる傍らで、

別の世界を作ってスケブを埋めています。

 

さて、イベント終了後にはのぶみほお約束として『打ち上げ会』があります。

これはまあ、いわばお友達との飲み会なワケです。

どれみ好き、で、いつの間にかイベントやネットなどで繋がった人たちと、

せっかくだからわいわいしましょう、というもの。

私達にとって、イベントの即売会も楽しみですが、こっちもかなり重要に楽しみにしています。

今回のイベントでも結構な人数が集まって、打ち上げ直行をわくわくと待ってます。

ちなみに、いつも何人集まるかさっぱり分からないのよね。

基本的に顔見知りの人間が多いけど、飛び入りさんとか初対面の人も多いから。

結構来るもの拒まずだから、もし興味ある人いたら勇気を出してのぶみほに遊びに来てね。

 

ま、そんなワケでみんな待ってるんです。

ええ、そうです。 イベントの終了じゃなくて、

みほ先生のスケブ完成をです。

みほ先生が終わらないと、打ち上げできないですから。

 

『あと何枚描くの?』

と、聞かずともそこに積まれているスケブを見ればため息が出るほどに分かります。

しかもみほ先生、ご丁寧にきっちり色まで塗るものだから、もう。 ああもう。

みなさん、声にには出さずとも、

『はよ終われー、腹減ったー、酒飲みてえー』

という表情をして疲れたようにみほ先生を囲みます。

ああ、何か他人事ながらとっても痛い。

ってゆうか、他人事じゃないのね、私とみほみほは。

うーん。

…うーん。

…うぅぅぅん…。

のぶこはちゃんと空気の読める大人心を持っているので、もういたたまれなくなって決断しました。

 

 

「みほみほ」

「な、何? のぶちゃん…」

「置いて行く」

「…えっ!??」

「仕方ないから、私達先に行く。

みほみほ一人だけ、スケブ書き上げるまで粘ってちょうだい。

あ、場所ここだから。 終わったら電話してね

え、ええええ!? ちょ、ちょっと…のぶちゃ…」

 

知りません。

のぶこ、みほを置き去りにして皆を引き連れ、打ち上げの焼肉屋へ行きました。

 

さー、今日もいい仕事したわね!

乾ぱーいっ♪

みんな『かんぱーい!!』

 

 

 

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「…はぁ、はぁ、はぁ…」

「あら、予想はしてたけど遅かったじゃない、みほみほ」

「…あのね、会場残ってられなかったから、神田のミスドーまで行って描いてきたのっ…

疲れたの… 大変だったの…」

(ちなみにイベント会場は浅草、この打ち上げ会場は御徒町でした。 何で神田なのやら)

「みほみほって、自業自得が似合うわよねぇ〜

「…と、ところで、なんかお肉が無いんだけど

「無いわね。 遅いもん

「…え、あの…」

「遅いんだもん」

「………。

くそぅー!! カラオケだ、カラオケ!

カラオケいくぞぉー!!!!(泣)」

 

打ち上げって、いっつも私達カラオケするんだけど、

その辺りのお話はまたいつか。

 

ちなみにみんな、日記の話は8割フィクションって冒頭に書いてある事、忘れないでね?

 

 

 

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